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なぜ人を殺してはいけないのか?(中編)



これは中編です。必ず前編から読んでね!

 さて、この子供の問いにどう答えるべきでしょうか。

 「お前にはそんなこともわからないのか!」と一方的にののしったりするのは論外ですが、最悪の答えだと思うのは、「人を殺すことはいけないんだよ。」と教え込もうとすることだと思います。
 いくらなんでも、そうした答えを素直に受け入れるほど子供はだまされやすくはないでしょう。

 逆に、これを鵜呑みにする子供がいるとしたらそれこそ危険ではないでしょうか。 これを鵜呑みにする子供は、様々な情報や説明を鵜呑みにする子供に育ってしまうのではないでしょうか。 ダイエット法や健康食品の広告、インチキ宗教の勧誘、様々な国の政府の国民への説明、...。 その他いろいろな情報にこれからさらされていく子供たちに必要なのは、情報が与えられたときにそれを無批判に信じることではなく、そうしたたくさんの情報の中から信頼できる情報を自分で考えてつかみとっていく力だと思うのです。


 まず、人を殺すのはいけないのかいけなくないのか、よく考えてみることにしましょう。

 ちょっと考えただけで、実際に、人を殺してはいけなくない例を簡単に思いつきます。 国家が人を殺してもいいと認めている例です。
 日本では、死刑によって、国家が正当に人を殺すことがあります。 もちろん、普通の人が死刑囚を殺していいわけではありませんが、(その是非はさておくとして、)一定の手続きのもと、国が死刑囚を殺しています。 死刑制度がない国ももちろんありますが、死刑制度を持っている国は、少なくともある場合には、人を殺してもいけなくはないと認めていることになります。
 そして、これは、日本においては一般国民の多数派の考えでもあります。 2004年の内閣府による世論調査によれば、死刑容認派が81%、どんな場合でも死刑は廃止すべきと答えた人の割合は、わずか6%でした(内閣府 2004)。

 また、2003年に起こったイラク戦争で、アメリカ軍は、いろいろと言い分はあるにせよ、イラクの人をたくさん殺しました。 無実の一般の市民も(直接ターゲットにしているわけではないでしょうが、結果として)たくさん殺しています。 そんなことをするアメリカはいけない国だと言っている人も多いけれども、そうでない人もいます。 日本政府もそのアメリカを公式に支持していることになっています。 (その是非はさておくとして、)無実の人を殺すような国を日本は支持しているのだから、日本は国として、人を殺すことは絶対にいけないという立場に立っているわけではないということになります。

 さて、人間社会で人を殺すことがいけないかいけなくないかをもっと根源的に論じるために、人間に最も近い動物、チンパンジーを考えてみましょう。 人間は、類人猿から進化し共通点もきわめて多いので、類人猿の社会について見てみることは、人間の本質に迫るのに必要なことだと思います。
 チンパンジーには、子殺しや、群れと群れの間の熾烈な殺し合いがあります(立花 (1991)などを参照にするとよいかもしれません。)。 とても残虐です。 でも、チンパンジーはいけない動物だということにはなっていませんし、他のチンパンジーを殺したチンパンジーを誰かが処罰したりもしません。
 人間も長らく、チンパンジーの仲間の延長として、人間同士殺し合う社会を形成していました。

 過去の日本を振り返ってみても、例えば戦国時代の武将たちは、平気で殺し合いをしていました。 何の理由もなく快楽で殺していたわけではありませんが、殺していたことに違いはありません。 でも、学校で、彼らをいけない人たちだとは教えていません。 それから、尊敬する人物に戦国武将の名を上げる大人も少なくありません。 人をたくさん殺していたのに、です。

 こうして考えてくると、人を殺してはいけない、というのは、神から与えられた不可侵の疑う余地のない規則だということにはならないことがよくわかります。
 子供たち、中学生、高校生たちは、こうしたことに気づいているはずです。 この程度の情報は学校や日常生活の中で得ているわけですから。 論理的に例を挙げて説明する論証説得能力はまだなくても、こうしたことに気づいているから、「なぜ、人を殺してはいけないの?」と問うて大人を困らせるのでしょう。



後編へ続く! 必ず結論まで読んでね!

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