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いじめは人間の本能か?(前編)



 今回は、深刻ないじめがなかなかなくなりにくい原因の一つを考察してみようと思います。

 やや暗めのエッセイになってしまいますが、いじめ問題を考えるときには避けて通れない視点だと思いますので、最後まで読んでもらえればと思います。

 小学校の頃、よく金魚を飼うことがありました。 飼育方法としては間違いだと思いますが、幼い自分は、数が少ないのはつまらないと思っていたので、常に、一つの水槽の中で10匹以上は飼っていました。 その中で、時々、体が弱ってきて、死にそうな金魚が出てきます。 弱々しく泳いだり、さらに死が近づくと、ひっくり返って力なく微妙に体を動かしたりしています。 そういうとき、驚くべきことに、他の元気な金魚たちがみんなで、その弱った金魚をつつくのです。 弱って死を目前にした金魚にとっては、たいへんな恐怖でしょう。 一応逃げようとしますが、最後の力を振り絞ってなんとか他の金魚の攻撃をふりはらうという感じで、そのうち力尽きて死んでしまいます。 このような金魚の行動が一般に見られるものかどうかわかりません。 飼育方法が間違っていて、水槽の中の金魚たちにストレスがあったのかもしれませんし、エサが不十分であったことが影響していたりするかもしれません。 しかし、とても厳しい自然の摂理を見た思いがしました。

 魚の世界なんて、人間とは関係ないじゃないか、と思うかもしれません。 確かにいきなり両者を結びつけるのは危険でしょう。

 さて、自分は、動物を見るのが好きなので、よく動物園に行くことがありました。 そして、特に鳥のオリなどで、鳥たちがたくさんいる中で、毛のむしりとられた鳥を見ることがありました。 どうやら他の鳥に執拗に突かれてこうなってしまったようでした。 子供を連れたお母さんなんかが、かわいそうに、などと言っている光景をよく目にしました。

 鳥なんて人間よりはるかに下等な動物だから、人間の行動に結びつけるのは飛躍ではないか、と思われるかもしれません。 確かにそうかもしれません。

 もう少し生物学的に人間に近づいてチンパンジーを考えてみましょう。 チンパンジーの群れの研究などがさかんにされていますが、野生のチンパンジーの群れの中でもいじめというのはあるようで、そういう行動が観察されています (いじめどころか、チンパンジーには幼いチンパンジーを殺す行動があることも有名ですよね)。 (詳しくは、京都大学霊長類研究所などの研究者の著作を読むとよいかもしれません。 西田(2001)などもいいのかも。)

 チンパンジーと人間だって全然違うじゃないか、と思われる人もいるかもしれませんが、人間の行動の少なからぬ部分は、他の生物と共通していて、特に、人間に近いとされている類人猿などには、似た行動が多いことが、比較生物学や自然人類学により明らかにされています。 (例えば、フィッシャー(1993)は、極めて人間的なものと一般に考えられている”愛”でさえ、類人猿を含む他の生物との共通点がたいへん多いことを示しています。)

 そして、いろんな生物に見られるこれらの行動は、もしかしたら、弱い個体、一時的に弱くなった個体を環境から排除しようとする生物学的な性質なのかもしれません。 そうした個体の排除が、生物学的には、環境の資源をより有効に利用する方法であるのかもしれません。


 少し視点が変わりますが、先日、NHKテレビで放送されていたドキュメンタリー番組(「ブルー・プラネット」シリーズ(BBC製作)の「COASTS」の回)の中に、とてもショッキングな映像がありました。 それはシャチの行動についての映像でした。 シャチといえば、水中で音によるコミュニケーションをとり、複雑な社会を形成していることで知られる鯨の仲間で、比較的高等な哺乳類です。 そのシャチが、アザラシの子供を襲っていました。 でも、それをすぐに食べるのなら、普通の捕食行動であって、驚くことでもなんでもありません。 衝撃的なのは、そのアザラシの子供をシャチが空中に投げ上げて遊んでいるという行動の映像でした。 アザラシの子供は生きたまま、シャチに食いつかれ、何度も空中に投げ上げられていました。 そして、そのシャチの遊びは、アザラシの子供が息絶えてしまってもかなりの長時間にわたって続いたそうです。
 アザラシの子供の味わった恐怖はいかばかりでしょうか。 そして、シャチにとって、その行動は快感であったに違いないと思うのです。 生物は、必要に迫られない限り、快感でない行動を進んで行うことは一般にないでしょうし。
 (この例は同種の特定の個体に危害を加えるというものではないので、いじめという行動に直結するものではもちろんないとは思います。 でも、シャチにとって、投げているものが単なる物ではなく、生物のアザラシであるということに意味があるとすると...。)


 さて、人間はそうした他の生物たちと全く違うと言い切れるでしょうか。



後編へ続く! 必ず結論まで読んでね!

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